old 8059 story

□最果ての空
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光を仰ぎ


太陽に溺れた


際限なく零れる眩しさに眼が眩んでは


息をするようキスをした…








「獄寺、ツナから聞いたんだけど…」



──イタリアに帰るんだってな…



張り詰めた糸が撓み、決して交わることないと思われた俺達の平行線。



生きてきた道が違う…
生きてゆく道が違う…



それでも尚、心満たす存在になった今…



ツナから告げられた
友達以上恋人未満な獄寺の別れ道



脈打つ鼓動が加速して

脳内全てが痺れてゆく

自虐の不調和に浮沈し

瞬ぐ力も見失う…



呆然と立ち尽くし、獄寺を視界に焦がす。


光に背を向け照り映える獄寺は、銀糸に太陽を取り込み透明な金に彩られていた。



風が空路を彷徨い吹き抜ける


あと一歩が踏み出せなかった自分を


押し上げるように…




こんなに近くて

こんなに遠い

そんな獄寺が

祖国に帰ってしまう今

報われなくてもいいから

心許ない秘めた想い

不安定に揺れ揺らぎ

燻り続けた真実



幾度と躊躇い

呑み込んでは

心と躯を蝕み続けた



…今なら 伝えられる



鋭利な程に研ぎ澄まされた最奥の

温かい闇…




失えない


及ばない


見惚れては高鳴り


笑みを乗せ誤魔化し続けた…




歯止めの効かないこの闇は

日に日に感度を上げ

容赦なく圧迫しては
熱を上げた




──もう 限界


正直何度も思ってた

とっくの昔に気付いてた

臆病な自分

光を見い出せずに

戸惑い 躊躇しては



息苦しさに溺れてた…




「オマエがいないと…
…呼吸ができない…」

──獄寺がいないと

なにもかも色褪せてしまう…




君に出逢って

初めて知った


『恋』が

こんなに苦しいものだと…




だから…

息をするようキスをした…





屋上に薄い影を残して


二つの淡い影を

射し零れた光が


優しく包み空に縫い重ねてくれた…



「俺は、オマエの元に必ず還るから…」

…だから 待ってろ




そう言い残し

獄寺は遠い祖国へ

帰還した──



俺は、口付けの名残を何度も拭い

高い空へと想いを馳せる…



「早く、帰ってこいよ…」

──獄寺…





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