old 8059 story

□雪月花
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凛と澄んだ高い空

ふわり ふわりと舞い堕ちる

淡雪で君を見失いませんように…







「うわっ、さみぃと思ったら雪だぜ獄寺…」

突如空を見上げた山本が、白い息を上げ叫んだ。

吊られて空を見上げれば、疎らに舞い散る雪に思わず言葉を失う…


「すげぇな…、雪ってこーやって見ると、綺麗だな…」

感嘆に独り呟く山本…


月明かりに舞う雪は

煌めく銀を纏い

まるで…



…獄寺みたいだと思った…



ふわり ふわりと絶え間なく街を染め上げ、

きっと 明日は
銀世界…



言葉なく立ち尽くす獄寺に、視線を移すと



煌めく銀を纏った獄寺が


白く 白く 綺麗で



月明かりと

雪明かりの狭間で

ぼんやりと照らし出されたその姿に



思わず息を呑み


言葉を見失う…




凛然とした空気も忘れ


呼吸も忘れて


世界の全てが


静かに遮られた──…




雪の舞う空を仰ぐ獄寺は

神秘的な翡翠の瞳に

淡い影を写し出し

幻想的な情景に取り込まれそうな程



儚く 美しかった…



銀が銀を染め

白が白を染め上げてゆく

獄寺に淡雪が舞い堕ち

静かに隠してゆく…




途端、見失いそうな焦燥に駆られ

傍らに立ち尽くす獄寺に手を差し伸べては


引き寄せた…






…逝かないで…





「…山本…?」



消え入りそうな程

儚く見えて


見失いそうな程

綺麗だった



だから

強く 抱き締め

視界を塞いだ──…




吐き出す吐息が

雪煙のように隙間を縫い

雪の繚乱の最中

繋ぎ止めた──…





どうか この人を


連れて逝かないで…





生き急ぐこの世界で


たった一つの


確かな欠片…







願わくは


終焉の軌跡へと雪が舞い散り



彼を 誘いませんように──…







fin


長編の山獄のあとに書いた突破SS

長編写しきれてないのに先載せるとか
私バカですよね(笑)

急激に寒くなった
 

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