old 8059 story
□彼方の蒼と紅
1ページ/14ページ
溢れる想いを 織り上げて
祈りを込めて 舞い上げた
見上げれば 何処までも深い蒼
契れた雲の波間から
零れた 雨の道しるべ
明日は きっと
雨が降り
沈んだ大地に降り注ぐ…
『Gside』
──並盛中屋上──
独り慣れない喧騒を抜け出して、紫煙を空に向け吐き出す。
蒼空には一筋の飛行機雲…
フェンスに身を委ね、グランドに見える生徒達の雑踏を見降ろす。
ふと、見馴れた人物が目に止まり、息を呑む──
周りに比べ、頭一つ飛び抜けた黒髪の男は、肩にも届かない背丈で、栗色の髪を靡かせた女と並び歩いていた。
──嫌でも、その二人のやり取りが安易に想像できた。
馴れたと云ってもいい、いつもの事だから。
そう自分にいい訊かせ、何も知らない振りをする…
──そんな 無意味な行為を何度繰り返すんだろ──
間違ってるのは 俺達で、相成れない二人の果てしない平行線…
罪を連鎖的に犯し続ける罰──
判っていても、二人の男女からは決して眼を逸らせない。
女の表情は見えないが、ヘラヘラ笑う野球バカだけは良く見える。
一通り愛想を振り撒いて、最後は頭を下げて終わるんだ、
──いつもは…
風が止まり
音が消える
時が止まり
呼吸が止まる…
──不自然に重なる男女の影…
確かめなくとも キス だと判る──
その瞬間
脳とゆう名の
感情回路は活動を停止した──
気が付けば、
屋上をあとにし、帰路に着いていた。
窓からは、夕暮れ色に染め上げられた街並み。
テーブルに投げた携帯が、忙しなく鳴り響く…
発信者──恋人
受信者──故障中
「…くそっ…!!」
独り言の様に呟くと、電源を落としソファーに突っ伏す。
眼を閉じれば、焼き付いた情景がリフレインする。
こんな感情知らない、
いらない…
あいつさえいなければ、こんな感情知らずに生きてゆけた…
使命だけを掲げて、10代目の為だけに生き、死ねたのに──
余計な感情は全て、
祖国イタリアに棄ててた
余計な劣情は、母を失った時間に置いてきた…
──強く生きる為──
大丈夫 まだきっと間に合うさ
あの頃みてーに 生きればいい
侵食され 蝕まれ 腐蝕してゆく時間を
自らだって止めてやる
→