old 8059 story

□彼方の蒼と紅
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溢れる想いを 織り上げて

祈りを込めて 舞い上げた

見上げれば 何処までも深い蒼

契れた雲の波間から

零れた 雨の道しるべ

明日は きっと

雨が降り



沈んだ大地に降り注ぐ…







『Gside』

──並盛中屋上──

独り慣れない喧騒を抜け出して、紫煙を空に向け吐き出す。
蒼空には一筋の飛行機雲…

フェンスに身を委ね、グランドに見える生徒達の雑踏を見降ろす。
ふと、見馴れた人物が目に止まり、息を呑む──


周りに比べ、頭一つ飛び抜けた黒髪の男は、肩にも届かない背丈で、栗色の髪を靡かせた女と並び歩いていた。


──嫌でも、その二人のやり取りが安易に想像できた。


馴れたと云ってもいい、いつもの事だから。

そう自分にいい訊かせ、何も知らない振りをする…



──そんな 無意味な行為を何度繰り返すんだろ──



間違ってるのは 俺達で、相成れない二人の果てしない平行線…


罪を連鎖的に犯し続ける罰──


判っていても、二人の男女からは決して眼を逸らせない。

女の表情は見えないが、ヘラヘラ笑う野球バカだけは良く見える。

一通り愛想を振り撒いて、最後は頭を下げて終わるんだ、

──いつもは…




風が止まり
音が消える

時が止まり
呼吸が止まる…





──不自然に重なる男女の影…


確かめなくとも キス だと判る──





その瞬間

脳とゆう名の

感情回路は活動を停止した──






気が付けば、
屋上をあとにし、帰路に着いていた。

窓からは、夕暮れ色に染め上げられた街並み。
テーブルに投げた携帯が、忙しなく鳴り響く…



発信者──恋人

受信者──故障中




「…くそっ…!!」
独り言の様に呟くと、電源を落としソファーに突っ伏す。

眼を閉じれば、焼き付いた情景がリフレインする。



こんな感情知らない、
いらない…

あいつさえいなければ、こんな感情知らずに生きてゆけた…

使命だけを掲げて、10代目の為だけに生き、死ねたのに──


余計な感情は全て、
祖国イタリアに棄ててた

余計な劣情は、母を失った時間に置いてきた…



──強く生きる為──


大丈夫 まだきっと間に合うさ

あの頃みてーに 生きればいい



侵食され 蝕まれ 腐蝕してゆく時間を

自らだって止めてやる


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