old 8059 story
□彼方の蒼と紅〜過去〜
1ページ/2ページ
見上げれば
何処までも果てしない蒼い空
一筋の飛行機雲が
薄日の様な一筋の残影を描き
穏やかで暖かい
木漏れ日を届ける
優しい光に手を翳し
仰いで透けた掌は
心地好い紅だった…
──並盛中屋上──
「…獄寺、良い天気だなっ」
空に向け、紫煙を燻らせる傍らに向かい呟く。
「…ああ、ほんとだな…」
──こんなに 穏やかな時間は久しぶりで
ゆっくりと、雲が流れて 眩い陽光に優しく包まれる。
「ほらっ、見ろよ…!…あれ、飛行機雲じゃね?」
山本が指し示す指先を視線が辿り、示された彼方には淡い一筋の飛行機…
──あの 雲を辿ったら、遠い彼方へ続くのかな…?
ふと、歪んだ未来のアイツの顔が、頭を過り、切ない想念に苛まれる。
「…あの雲は、いつか消えちまうんだろうな…」
…跡形もなく…
空を仰いで 小さく呟いた
「…そうだな…」
──いつか 俺達も、
あの雲の様に、痕も残せず消えるのかな…
彼方を目指して 昇って
斜陽の様に儚く消える──
残るのは、空虚な経路と天命の軌跡…
──それでも 俺達は罪を重ねて 繰り返す
互いの誓いと 宿命の元に──
「未来の俺、かっこよかった…?」
突如山本が尋ねると、鮮明に記憶が甦り、何故か胸の奥底が微かに切ない…
「…知るかっ、覚えてるのは、相変わらずだった…、ってだけだ…」
「はははっ、…そっか、…相変わらずか…。
…でも、変わらないって、嬉しいのな…」
遠くの空を見上げて、口許に充足を綻ばせる山本。
──変わらない事
変わってしまった事
未来のアイツは
山本であって、山本ではなかった…
野球とか、親父さんとか、
きっと数え切れないものを失って
数え切れない血と涙を流しただろう
──それでも
「…幸せそうな、馬鹿ヅラしてやがった…」
穏やかな風が吹き抜け
また 雲が流れてゆく
「…そっか、なんか…俺らしーなっ…」
山本に視線を移せば、勝ち誇った様な、優しい笑みを彼方へと向けていた…
──俺の事は 聴かない…
興味ねーわけじゃねぇ
でも…
──多分…いや、ぜってぇ
幸せなツラしてんの
わかっからいい…
next page
→