old 8059 story

□彼方の蒼と紅〜過去〜
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見上げれば

何処までも果てしない蒼い空

一筋の飛行機雲が

薄日の様な一筋の残影を描き

穏やかで暖かい

木漏れ日を届ける



優しい光に手を翳し

仰いで透けた掌は

心地好い紅だった…









──並盛中屋上──

「…獄寺、良い天気だなっ」

空に向け、紫煙を燻らせる傍らに向かい呟く。
「…ああ、ほんとだな…」



──こんなに 穏やかな時間は久しぶりで

ゆっくりと、雲が流れて 眩い陽光に優しく包まれる。


「ほらっ、見ろよ…!…あれ、飛行機雲じゃね?」
山本が指し示す指先を視線が辿り、示された彼方には淡い一筋の飛行機…



──あの 雲を辿ったら、遠い彼方へ続くのかな…?

ふと、歪んだ未来のアイツの顔が、頭を過り、切ない想念に苛まれる。


「…あの雲は、いつか消えちまうんだろうな…」

…跡形もなく…


空を仰いで 小さく呟いた

「…そうだな…」



──いつか 俺達も、
あの雲の様に、痕も残せず消えるのかな…


彼方を目指して 昇って

斜陽の様に儚く消える──


残るのは、空虚な経路と天命の軌跡…




──それでも 俺達は罪を重ねて 繰り返す

互いの誓いと 宿命の元に──



「未来の俺、かっこよかった…?」
突如山本が尋ねると、鮮明に記憶が甦り、何故か胸の奥底が微かに切ない…

「…知るかっ、覚えてるのは、相変わらずだった…、ってだけだ…」
「はははっ、…そっか、…相変わらずか…。
…でも、変わらないって、嬉しいのな…」
遠くの空を見上げて、口許に充足を綻ばせる山本。



──変わらない事
変わってしまった事

未来のアイツは
山本であって、山本ではなかった…


野球とか、親父さんとか、
きっと数え切れないものを失って

数え切れない血と涙を流しただろう



──それでも

「…幸せそうな、馬鹿ヅラしてやがった…」


穏やかな風が吹き抜け
また 雲が流れてゆく


「…そっか、なんか…俺らしーなっ…」
山本に視線を移せば、勝ち誇った様な、優しい笑みを彼方へと向けていた…



──俺の事は 聴かない…

興味ねーわけじゃねぇ

でも…


──多分…いや、ぜってぇ

幸せなツラしてんの
わかっからいい…



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