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□巡恋華
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単独任務を名目に、武者修行を兼ねた旅を繰り返す。
その先々で見付けた、僕にはまるで意味を為さない装飾品。
小さくて、実に下らない石ころもあの子が飾るとなぜか輝きを増す。
どんなダイヤより光輝き、どんな宝石より価値を得る。
(…これ、隼人の瞳に似てる…)
仕事先で見付けた、小さいながらも輝かしいエメラルドのピアス。
施された宝石なんかより、身に付けた本人の瞳はもっともっと美しいだなんて思う僕も、心底呆れた人間だよね。
溜め息を溢しながらも迷わず購入してしまい、贈る主を想いながら早速アジトへと帰路を急いだ。
──ガチャ…
「隼人、入るよ」
「おい、テメーは何度云ったら判んだ?入室の時は、ノックぐれぇ常識だろ?」
隼人専用執務室。
毎度のお小言なんて、聞く耳持たない僕は、この部屋の主と永い永い因縁の付き合い。
良い意味でね。
「隼人にお土産。」
ぶつぶつ尚も小言洩らす隼人へと、差し出す簡素に包装された小さな箱。
一瞬眼を疑うように翡翠を見開き、遠慮がちにそれを受け取った。
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