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□OUT ZONE
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敵対する組織に所属する中、禁断の恋に狂った二人の蜜なる会瀬。
仲間の眼を欺き、忍んで重ねる密か事。
下弦の月に隠れ、今宵も焦がれる情人へ逢いに行く。
許されない恋。
報われない愛。
理性では自制心の警鐘を鳴らし続けるのに、傾けられない耳は大概イカれてる。
心も躯も壊される事を願い、望みながらも恋に乞う。
例え一時でも救われるのなら、失速するこの猥雑な恋情に狂い堕ちたって構わない。
もっと強く。ずっと深く。限りなく暗い真髄迄あんたで俺を埋め尽くしてくれよ。
イタリア郊外のとあるホテル。
闇夜を忍び部屋を訪ねる。
ノックの返答ももどかしくて、開閉迄のほんの僅かな刻さえ煩わしい。
指定された一室の前に佇み、待ち人が施錠を解いた瞬間から、蜜なる夜の時間は刻々と始まりを告げる。
引き摺り込まれるよう手を引かれたのと、雪崩れ込むよう胸へ飛び込んだのはほぼ同時だ。
「…逢いたかった」
覆い縋るよう頬を男の胸へと埋め、上目遣いに見上げる翠色が瞬く。
濡れたような翡翠の瞳は、媚薬を織り混ぜような微笑を浮かべ、漆黒の隊服に身を包む男を魅惑に惑わす。
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