×59

□stray wolf
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古びた教会。錆び付いた鐘の音と鈍色に輝く十字架。
ノイズ交じりの讃美歌が朽ち掛けた木製のベンチを軋ませ、まるで罪深い僕達を場違いだとも云わんばかりに鳴り響く。

どんなに取り繕っても、装いに聖を演じても、皮肉だね。
きっと僕達に染み付いた血生臭い死臭、拭い切れない血糊。
抗える筈もない剣呑な陰影へ懺悔を乞わせるのかな。



あからさま居心地の悪い空間。
追い出さんとばかり鳴り止まない不快な旋律。



とてつもなく耳障りで、至極不愉快に関わらず、滑稽にもこの場を離れられずにいる愚者。
そうせざるを得ないのには相当の理由がある。

同じ稼業を共にし、節高く繊細な指先を血に染めた男が、僕をこの不似合いな場所へと繋ぎ止めている。

導かれるまま訪れた聖地。暗闇を生きる僕達には到底そぐわない場所。

誇りと埃にまみれたステンドグラスから注ぐ陽光。
日の光を気紛れに乱反射する色素の薄い髪。同色の睫毛に縁取られた瞳が静かに瞬き、僕の不機嫌な視線を辿り重ねられる。



「急にわりぃな…辺鄙な所迄付き合わせちまって」



翠色の光彩が微かに愁いを映し、すぐまた勝ち気な色を取り戻しては硬質に輝いた。

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