×59
□blood engage
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窓から差し零れる麗らかな陽の誘惑。
凛然と冴えた空を目指し屋上の扉を開け放った。
昼休みでない限り人気のない屋上は、寒々しい空気に満ちて厳粛とさえしている。
ツンとする冷たい空気を肺に取り込み、ほっと白い息を吐き出した。
グラウンドを優に見下ろす貯水タンク。
梯子に足を掛けようとして、先客の存在に手を止めた。
「またサボり?」
気配を殺して遣り過ごすつもりだったのか。
校則違反常習者の影が億劫そうに雲雀を振り返った。
「チッ…またてめぇかよ」
身を潜めたコンクリの壁から渋々と顔を出した獄寺隼人。
整った顔立ちに反して、だらしなく引っ掛けられたネクタイ。
見慣れた姿に眉を顰めて、唇の端を吊り上げる。
「安っぽい装飾品、だらしない制服の着用。及び喫煙の疑いと学生の義務違反。僕の領域で随分良い度胸だね」
「授業のサボりを校則違反だってんなら、てめぇだって同罪だろーが。あと、その学ランも」
挑発的に言葉を返して、挑むように雲雀を睨み付ける。
そんな獄寺を冷ややかに見据えて、一歩足を踏み出した。