old 8059 story

□彼方の蒼と紅
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果てない放物線

辿って 辿って

彷惶えば

巡り 廻って 行き止まり



遠雷響く 歪んだ空に

紅蓮の嵐がただれゆく…







『Yside』

──並盛中 音楽室──

部活を終え、喧騒の消えた教室に一人忘れものを取りに向かう。

静寂の校舎に 微かに響くその音──


聴き覚えのある その曲は、

いつしか恋人が授業で好きだと云っていた あの曲…


静まる放課後校舎、気が付けば音楽室へと足が赴く。

恐らく奏でてるであろう人物は

焦がれて 想いを馳せるあの男──


銀糸を纏った、翡翠の瞳、儚いくらいの気高さで、過去を背負って生きてきた

眩く 哀しい 愛しい人──



何度躯を重ねても
何度想いを吐き出しても

満たされることない 熱情…

ひとときの熱じゃ足りなくて、言葉なんかじゃ伝えきれない。



こんなに醜く 尊い 想念──…



白く美しい指が織り成す、鍵盤の旋律が間近に迫る。

この扉の向こうに、アイツがいる。扉を開けて視界に焦がす筈だった…



…聴き覚えのある声…

俺の知らない刻を知る、羨望と共に信頼された人物──



「懐かしい曲だな、隼人」

「ぁあ?テメーいつからいたんだよ!?」

「職業柄、足音消すのが習慣になっちまっててな」

「…相変わらず、趣味わりぃ…」

「そういや、最近俺ん家こねーな?俺はもう、用無しか…?」

「…ばっ、変ないい方すんじゃねーよっ!!」

「だって〜、隼人くん最近構ってくれないんだもんっ♪おじさん寂しい〜」

「…んなっ、キモい云い方すんなっ、変態ヤブ医者め…っ!!」

「つれないねぇ…、その変態とキスしたのは何処のどいつだ?」





扉に触れた手が止まる──

躯中の血液が逆流し、脳が沸騰する。


鈍く静止する

聴覚
触覚
視覚と

全ての 感覚…


代わりに沸き上がる

──黒い感情──



走って 走って 走り続ければ

纏わりつく その呪縛から逃れラレルカナ…



生まれもつ恵まれた才能を他人から羨まれ、多分好かれて 生きてきた。

為せば成るの如く、欲っするままに手に入れてきた。
手に入れられると 思ってた…





手の中に掴んだ光が


今 彼方の空へと消え入った──…




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