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□彼方の蒼と紅
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果てない放物線
辿って 辿って
彷惶えば
巡り 廻って 行き止まり
遠雷響く 歪んだ空に
紅蓮の嵐がただれゆく…
『Yside』
──並盛中 音楽室──
部活を終え、喧騒の消えた教室に一人忘れものを取りに向かう。
静寂の校舎に 微かに響くその音──
聴き覚えのある その曲は、
いつしか恋人が授業で好きだと云っていた あの曲…
静まる放課後校舎、気が付けば音楽室へと足が赴く。
恐らく奏でてるであろう人物は
焦がれて 想いを馳せるあの男──
銀糸を纏った、翡翠の瞳、儚いくらいの気高さで、過去を背負って生きてきた
眩く 哀しい 愛しい人──
何度躯を重ねても
何度想いを吐き出しても
満たされることない 熱情…
ひとときの熱じゃ足りなくて、言葉なんかじゃ伝えきれない。
こんなに醜く 尊い 想念──…
白く美しい指が織り成す、鍵盤の旋律が間近に迫る。
この扉の向こうに、アイツがいる。扉を開けて視界に焦がす筈だった…
…聴き覚えのある声…
俺の知らない刻を知る、羨望と共に信頼された人物──
「懐かしい曲だな、隼人」
「ぁあ?テメーいつからいたんだよ!?」
「職業柄、足音消すのが習慣になっちまっててな」
「…相変わらず、趣味わりぃ…」
「そういや、最近俺ん家こねーな?俺はもう、用無しか…?」
「…ばっ、変ないい方すんじゃねーよっ!!」
「だって〜、隼人くん最近構ってくれないんだもんっ♪おじさん寂しい〜」
「…んなっ、キモい云い方すんなっ、変態ヤブ医者め…っ!!」
「つれないねぇ…、その変態とキスしたのは何処のどいつだ?」
扉に触れた手が止まる──
躯中の血液が逆流し、脳が沸騰する。
鈍く静止する
聴覚
触覚
視覚と
全ての 感覚…
代わりに沸き上がる
──黒い感情──
走って 走って 走り続ければ
纏わりつく その呪縛から逃れラレルカナ…
生まれもつ恵まれた才能を他人から羨まれ、多分好かれて 生きてきた。
為せば成るの如く、欲っするままに手に入れてきた。
手に入れられると 思ってた…
手の中に掴んだ光が
今 彼方の空へと消え入った──…
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