×59
□midnight snake
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小言をぶちぶち呟きながら上着に手を掛ける。
上質なスーツを滑るように脱がせ、手慣れた動きでネクタイを緩める。為すが儘身を任せ、解放感に吐息した獄寺がしがみ付くよう男の胸倉に鼻先を埋めた。
「どうした…気分悪いのか?」
優しく訊ねれば、違うとばかりに頬を擦り付け左右に否定する。
「眠くなったか?ベッド迄運んでやるから、今夜はもう寝るといい」
幼子にするよう縋りつく銀の髪をそっと撫で、宥めるような声色で柔和に諭しては抱え上げようとした矢先。
「なー…サンマ〜…」
「…俺は魚じゃねぇし、前歯も出てねー。ほら、ベッド行くぞ」
ギュッと首へと回した腕に力を籠め、呆れ口調に肩を落とす男を引き止める獄寺。
「サンマじゃねーなら、ランマか…?」
「チャイニーズじゃねぇし、女にもならねえ。そもそも…作者が違うだろ」
「よくわかんね〜…」
悪戯にニヤニヤと薄笑いを浮かべる獄寺に溜め息して、
「おい酔っ払い、まさか恋人の名前忘れちまった訳じゃねぇだろうな?」
「バーカ…冗談に決まってんだろ」
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