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□捕えられたのは、
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ぷれぜんとふぉーゆー!の前日譚です。単体でも読めます。※



最初はただの気のせいだと思っていた。視線を感じて顔をあげれば海堂と目が合う。しかし合えばすぐに逸らされる。
越前は越前なりに、海堂にとって自分の第一印象は悪かったという自覚はあった。なるほど敵視されているのだと納得した。

それだけならばよくあることだ。誰に対しても挑発的な態度の越前を快く思わない人間は多い。
だが、海堂のそれはまとわりつく様な視線で、酷く違和感を感じる。テニスをしているときならば弱点を探ろうとしているのかと思えるが、日常生活でもじっとり見つめられる覚えはない。
気づけば海堂がすぐ隣に居たり、よろめいたりつまづいたときなどは海堂が真っ先に支える。

いつも見つめられ、気づけばそばに居る。なんとも居心地が悪かった。

今日も今日とて、部活終わりに着替えていると海堂の視線を感じた。運がいいのか悪いのか、部室には誰も居らず、問いただすには都合がいい。
居た堪れなくなった越前はいよいよ核心をついた。


「ねえ、海堂先輩。」


後ろを振り向けば、僅かに動揺した海堂がいる。まさか声をかけられるとは思っていなかったのだろう。それでも唇を固く引き結んでこちらを強く睨んでいる。
その態度に、越前は片眉をあげた。もしかしたら、越前が予想しているような事態ではないのかもしれない。
それならそのほうが良い。
海堂を見上げ挑発するように言った。


「オレのこと、好きなんスか?」


気色悪いことを言うな、と怒ってくれればいい。後輩との距離感が掴めないだけの不器用な先輩であってほしい。
しかし、思い描いた反応は返ってこなかった。たっぷり5秒ほど言葉の意味を処理したうえで、一気に顔を真っ赤に染めた。
人間というのはこうも一瞬で顔色を変化させることができるのか…と感心すらした。そして襲いくる後悔の念。これは踏んではいけない地雷だったようだ。


「な、なに、言って、ふざけんな!」
「そんな真っ赤な顔で言われても…」
「赤くねえ!!」


いやいや、とマジマジと顔を覗き込めば、口元に腕を当てて顔を隠そうとする。あんなに見つめてきた視線も、今はウロウロと彷徨って、決して合わない。うっすら浮かぶ涙で長い睫毛がキラキラ光り、なんだかいじらしく思える。


(あんがい悪くないじゃん)


両腕を海堂を囲うように壁につかせ、身動きを取れなくする。本来の海堂の力なら簡単に越前を突き飛ばすことが出来るだろうが、全く力が入っていない。足にも力が入らないのか、壁に持たれるように中腰気味になっている。
濡れた期待を孕んだ瞳がじっと様子を窺っている。微かに震える唇に指を這わすと、緊張のためか息を止め唇を引き締めキツく瞳を閉じてしまった。
それがとても残念に思えて、唇に当てた指でゆるゆると割れ目をなぞり、微かに開いたところに少し強引にねじ込んだ。
つるりとした歯に爪があたり、驚いて目を見開く海堂としばらくぶりに目があった。UMAでも目撃した人間のような表情に思わず笑ってしまう。そしてさも当然であるように『あけて』と言い放つ。
プライドの高い海堂が文句を言おうと一瞬開けたところに指を入れ込むと、噛まないように従順に、そして不服そうに口を開けた。


「一応気を使ってくれるんスね、やっぱりオレのこと好きなんじゃないスか」
「っひひゃう…」

モゴモゴと舌で指を押し返そうとしているが、滑る舌が指の腹を擽るだけで、否定の行為のはずが肯定しているように思えた。


「先輩、やらしい」



その舌に絡めるように少し乱暴にかき回せば、くぷ、と音を立てて形の良い唇から唾液が溢れ、指を伝った。
それにハッとした海堂はなるべく唾液が出ないように口を引結ぼうとしているのか、はからずも越前の指に吸い付くようになってしまっている。
いじらしい行為に気を良くし、指を第一関節まで出してはまた入れることを繰り返した。ちゅぷちゅぷと性感を煽る音に越前は知らず舌なめずりをしていた。

器用に海堂の足の間に膝を割り込ませると、すでに緩やかではあるが主張していた。目尻に涙を溜めてキツく睨まれるが、紅潮した頬が、決して振り払おうとしない従順さが、より嗜虐心を煽るだけだった。
普段の高潔な海堂からは想像もつかない痴態で、ひたすらゾクゾクする。

散々蹂躙した口内からあっさり指を引き抜くと、それを残念がるように海堂の鼻にかかった甘い声が出た。
きょとん、と海堂を見つめると、真っ赤になって「違う!」と弁明をはじめた。それがおかしくてクツクツ笑うと、更に顔を赤くして反論してくる。
和みかけた雰囲気を壊すように、越前は濡れた指先を海堂の胸元に滑らせ、タンクトップ越しでもわかるほどにぷくりと主張している乳首を爪で弾いた。
途端に海堂の身体が跳ね、かくんと膝が落ち越前の太ももに熱を押し付けるような体勢になる。力が入らないためか、越前の肩を震える指が掴んだ。
そんな海堂を労わるようにゆるく輪を描くように指を這わせて、嗜虐心に塗れた言葉を投げかけた。


「違わないっスよ、海堂先輩。アンタはオレのことが好きで好きで好きで、どうしようもなくて、めちゃくちゃにされたいって思ってる。…オレにこういうことされて、嬉しいデショ?」


「そうでしょ?」と不遜な笑みを湛えて幼稚じみた独占欲で海堂を雁字搦めに絡め取る。
不安と僅かな期待とで揺れる瞳に、決して振り払えない身体に、更に厳重に鎖をかけて、逆らえないように、教え込むように。



(もっともっともっとオレのことだけ考えて、オレでいっぱいになったらいいのに。
そうしたら、ねえ、海堂先輩)


END

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