テキスト

□最大級のEgoism
2ページ/3ページ

「…でも、ここは柔らかそう」
「…っ」

越前が目をつけたのは、海堂の厚い唇だった。
有無を言わさず胸倉を掴まれ、顔の近づいた海堂の髪を引き寄せ唇を重ねられた。

軽く宥める様に触れていたかと思うと、綻んだ唇を割って舌が侵入してくる。強引に舌を絡め合わせられ、角度をかえ、何度も。
酸欠からか、目の前がチカチカとして息が上がっていく。
無理な体勢と痛みで足がガクガクと震えてしまう。
それだけではないとは認めたくはなかった。

「んっ…、んぁ…あ、ちょ、えちぜ…」

力なく越前の身体を押し返す。名残惜しそうな舌が海堂の唇を舐めた。

「…なーんだ。海堂部長の唇柔らかくって気持ち良いじゃないっスか。嘘つき」

感じている海堂に気を良くしたのか、目を細めてほほ笑んでいる。
星が瞬くような不思議な感覚だった。
越前も何故だか楽しそうであるし、このまま、目を閉じて眠ることが出来たら幸せかもしれない。

「これだったら、身体も絶対に気持ち良いっスよ」

意識が混濁している海堂はそのまま冷たい床に体を預けた。ヒヤリとしたその冷たさに、理性がようやく引き戻される。

「っ…いい加減やめろ!」


振り払おうと暴れた爪先が、ピ、と越前の頬を掠めた。
プツリプツリと溢れる血にサアっと血の気が引く。
自分は何も悪くない、そう思うのに、脳をよぎるのは一緒に戦ってきた信頼出来る仲間だった越前の顔で、罪悪感でいっぱいになる。

「暴れたりしないで…って言いましたよね」

首筋にひたり。刃があたる。
身体は強張る一方。声も出ない。
ガラガラと昨日までの越前という存在が音を立てて崩れていくようだった。


「…つまんないから、声出してよ」

眉尻を下げ困ったような様子で、刃を退かし、唇を這わす。痕を付けるつもりなのか、吸い上げたり甘噛みを繰り返している。
ふわふわとした髪が胸元や首筋にあたってくすぐったい。


「…っんぅ、…ん」

面白い様に反応を返す海堂を、越前はさらに追い立てるように白いシャツに手を差し入れた。
ツンと主張した乳首をみて、侮蔑したように笑っている。

「…無理やりされてるのに、感じちゃうんだ?」
「っ…、…うるせえ!」

鬼の首をとった様に、そこばかりを執拗に弄ってくる。わざとらしく音をたてて吸われたり捏ね繰り回せば、簡単に身体は跳ねてしまう。

「ひぅっ、や、だ…!」
「それ無自覚っスか?誘い過ぎでしょ」
「さ、誘ってるわけねぇだろ!」
「嘘つき」

越前の手が海堂のズボンへとかかる。そこはわずかに膨らみをみせていた。
軽く前後に手を動かされただけで、だらしなく声をあげ腰が揺れてしまう。
その反応をみて、越前から笑みが零れる。

「そういうのが、誘ってるって言うんスよ」
「っ…、」

何か反論をと思い開いた口も、直ぐさま越前の唇に塞がれる。

「ん、…ぁ、ちょ、やめろッ…」
唇を塞がれると、どうにも頭がぼんやりしていけない。こんなに無理やり暴かれているのに許してしまいそうになる。
ズボンに触れる手が、欲を増幅させる動きに変わっていく。
素直に反応を返す下半身は、ズボンを押し上げる。まるで越前に擦り寄ってもっと撫でて欲しいと懇願している様で、海堂は情けなくなった。

「海堂部長のカラダは素直で可愛いっスね。撫でてして欲しいって泣いちゃってる」

ズボン越しにじんわり染み出た液を吸う様に、唇を落とす。

「ちょ、なに…っ」
「せっかくっスから、舌で撫でてあげる」
怒鳴ろうと形取った唇は、すぐに喘ぎ声を発するモノへと変容する。
腰からビリビリと電流が走ったように痺れて、動けない。

「やぁっ、あ、…ふざ、けんな!ア、」

越前は2、3回膨らみにキスを送り、ゆっくりズボンを下げていく。下着に舌を這わせ、往復して撫でまわす。

「撫でてあげてるのに、さっきより涙流してるっスね、…まだ足りない?」

欲を孕んだ笑みを浮かべて、下着に手を掛けられる。
もう海堂は言葉を発するコトに疲れてしまっていたので、何も言えなかった。
下着は越前の唾液と自身の液でぐしょぐしょに濡れてしまっているので、正直脱いでしまったほうが気分は良かった。
しかし、危険すぎる。何が悲しくて自分を犯そうとしている男にやすやすと下半身を晒け出さなければならないのか。
第一、自分は何故こんなにも簡単に身体を許しているのか。越前が、怖いからか、それとも、憎みきれないからか。
どちらにせよ、何もかもが理不尽だ。プライドも信頼もズタズタになってしまった。
海堂の中で何かがぷつりとキレた。


「…ふざけんな!」


鈍い音が部室に響いた。
ああ、ついに殴ってしまった。

肩で荒い呼吸を繰り返す。越前を殴った手の痛みは、今は感じない。麻痺したように冷たく、しかしどこか重い。
越前と、目が合う。
凍て付くほど、鋭い瞳。単純に怖い。危害を加えようとしているからかそれとも関係が壊れるからか、もはやわからない。
鈍い光が反射して、脳が逃げろ、と命令しても足が縫い付けられたかのように身体が動かない。

「………まだわかんない?
アンタさ、自分の立場、理解してる?」

鈍色のカミソリを手にし、海堂の頬にピタピタと当てる。
冷たいのか、それとも熱いのか、判断がつかない。

「…いくらお前でも、人殺す様なマネ…しねえだろ」

動かない身体とは対照的に、張り付いたかに思えた喉からは割とすんなりと声が出た。


「…信頼されてるんスね、オレって」

カミソリを海堂の頬から離し、一巡し、歪んだ笑顔が刃に映る。

「そうかもしんないっスね。 、アンタを傷つけるのもイヤだし、コロス、なんてのもしないっス。…でも」


こういう恐怖の与え方もあるって、覚えておいたほうがイイっスよ


ピタ、と海堂の腹部に刃をあてがった。自然と身体が強張る。

「…、」
「何するかわかります?」

刃を浮かせ、スルスルとヘソを通りその下の茂みへまたあてがう。

「アンタは、生えてないほうが似合いますよ」

すっと、軽く力を入れられると簡単に剃り落とされるソレ。
予想外の動きに身をよじった。

「はっ、ちょ、なにやって…!」
「動いたらダメっスよ。海堂部長の大事なトコまで切り落としちゃうかも」
「っ…、てめ…」

す、す、とゆっくり確実に剃られていく。恐怖はもちろんあるが、くすぐったい様な妙な感覚も同じ様にある。
萎えて力を失っていた自身が、ひくひくと持ち上がり越前の手にぶつかる。

「ひぅ…う、」
「…なに、アンタ剃られても感じんの?ヘンタイ」
「…て、てめぇに言われたく…ねぇ!」

最後のひと剃りを終えた越前が、ふー、と何もなくなってしまったトコロへ息をかける。

「やっ…!」
「…ほら、アンタのほうがヘンタイだよ」

先ほどまで茂っていたトコロは、白い肌だけが心細そうに晒されている。
床に散乱する残骸が実に滑稽だ。

「じゃ、記念撮影しましょ、海堂部長」
携帯を徐に取りだし、海堂の全身が写る様にピントを合わせ、カメラのシャッターを切りはじめる。

「いや、だっ!やめろ!」

自分のこんな姿をカメラにおさめる越前に取ってかかろうとしたが、頭を擡げはじめた自身を掴まれ適わない。
あげく、上下に扱かれだらしなく蜜を流しはじめてしまった。
がくん、と力が抜けて越前に向かって倒れこむ。
しっかりと抱き込まれてしまい、耳元を擽るように「かわいい」と揶揄されて悔しくて鼻を鳴らした。

「や、いや、だぁ…」
「すごいっスね、誰もあの海堂部長が顔真っ赤にして喘いでて、その上生えてないなんて思わないっスよね」

せめてもの意趣返しに、越前の肩を服越しに噛んだ。
少しだけ息を詰めた越前にざまあみろ、と溜飲を下げた。
だが、どうあがいても悪意を持った相手は一歩上回っていた。

「…この写真、プリントアウトして学校中に貼ったらどうなるんスかね、それか拡散する?」
「…っ!て、テメェ…」

意図に気付いた海堂に、越前のどろどろとした笑みは濃くなる。

「身体的な恐怖よりキクでしょ?」
「…〜クソッ」

ぎゅっと、目を瞑ったのを合図に欲を満たすための行為を再開した。
固く冷たい床に再度背を預けることになろうとは。
何もなくなってしまった白い肌に、御構い無しに越前は唇を落とす。

「思ったとおり、よく似合ってますよ」

唇を下へ移動させ、先ほど中断していた舌での愛撫を再開する。だらだらと涙を溢れさせてるソレに越前は上機嫌だった。

「ね、これって嬉し涙だったりするんスか?撫でる度にいっぱい溢れるんスけど」
「っは、あ…ン、んなコトしるか…!」

なされるがままの海堂は、自分の手で目と口を覆って、見ない様に、感じない様にと努めていた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ