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□Nerine
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「卒業」というものに別段未練はない。
ただひとつ、思い残すことがあるのだとすれば、きっと。


「ゴ卒業、オメデトウゴザイマス」


不遜な態度で、越前は花束を渡す。受け取った海堂は無表情のまま。


「これ。部員一同からっス」
「…ああ」


淡い花々で彩られたソレは、まるで決別の証の様で、胸がちくり、痛む。

(…あ)


その中の花のひとつに、目が捕らわれる。
ネリネの花、だった。


「…お前…、が選んだ訳じゃねぇよな」
「…そういうガラじゃないっしょ。」
「…だよ、な」


一瞬、思い上がった自分が恥ずかしい。
ネリネの花言葉が、「また会う日を楽しみに」だったから。


「……っ」
「え…?せ、先輩…?」


涙。
ぽたぽたと花弁に落ちる水滴は、朝露の様で。
不謹慎ながら越前は、驚きよりキレイだと思った。


「せん…ぱい、オレ、あんたとこれでお別れだって思ってないっス」
「…あ?」


言うつもりなかったけど、と続けて喋る。


「『また会う日を楽しみにしてる』から。高校で待ってて下さい。」

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