テキスト

□拍手ログ
4ページ/12ページ

拍手ログB


海堂は朝から喉の痛みで目が覚めた。喉がカラカラだ。
何度か咳払いをしてリビングへ下りる。朝食を作っている母が心配そうに「風邪かしら」と額に手を当てる。
少し気恥ずかしくて大丈夫だと告げて普段通りランニングのあとに学校へ行った。
母がショウガ湯を作ってくれたが、喉の痛みは多少引くだけだった。
何故風邪など…と思案するが、思い当たらない。鍛えているし栄養面でも問題ないはずなのに。
熱っぽさまで感じたが、気のせいだと首を振って学校へと向かう。
部室に着いて着替え終える。部員がコートに向かおうと部室を出る頃、越前が遅れてやってきた。至っていつもどおりだ。
「ちーす」
「遅刻だ」
「知ってますよ…、っげほ」
越前が咳き込む。まさか。
「てめぇか…!」
「何が」
「お前の風邪が移った。ちくしょう」
怒鳴ったら余計に喉も頭も痛くなる。
「…一応オレ、のど飴持ってますけど」
「…けど、何だよ」
「今食べてるので最後っスから」
「…仕方ねえ、それでいい」
「…は」
今はこの喉の痛みを緩和することが先決で、ぼんやりした頭では飴を取ること以外考えられなかった。
越前の両頬を挟んで口を塞いだ。舌の上で逃げる飴を追い回して掬い取る。
突然のことに顔を真っ赤にして息の切れている越前をよそに、
「レモン味か」
と奪い取った飴の味を確かめている海堂。
「ちょっ、先輩!」
「ンだよ、風邪移したお前が悪い」
「そうじゃなくて!い、今の…」
珍しく越前が声を荒げ、頭に響く。痛む頭を働かせて、先程の行動を思い返してみる。
「…………!」
一気に違う意味合いの熱が頭に上る。ようやく事態を把握した海堂は「てめぇのせいだ!」と吐き捨ててその場から逃げる様に走り去った。


口いっぱいに広がるレモンの味。
喉の痛みは消えそうだが、熱は一向に引きそうにもなかった。


END
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ