テキスト
□パフェ合戦
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2月も中頃に差し掛かった、冬のこと。それは越前の唐突な一言で始まった。
「パフェ食べたい」
「は…?」
「ファミレス行こ、先輩のおごりで」
「おいちょっと待て」
「後輩にたかる気っスか」
海堂の性格上、それはない。問題はそこではなく、決定事項なこと。
「そうじゃねえ、まず行く気はねえぞ」
「いいじゃないっスか、今日部活ないし」
「いや、そもそも何でお前とふたりで…」
「いいから行こ。お腹空いた」
何とも理不尽な理由で引きずられるままに駅前のファミレスに連行された。
「チョコパフェ1つ。先輩は?」
「…俺はいらない」
「じゃあ、オレの半分あげる」
もはや反論する気力も失せた。
パフェが来ると、越前は嬉しそうにスプーンを手にしてチョコのかかったクリームを掬った。
「うまいっス」
「そうか」
実に美味しそうに食べる越前をみると、おごったかいがあったと嬉しくなる。
口いっぱいに頬張る姿は小動物のようで愛らしい。