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□パフェ合戦
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「おいしいとこあげる。口開けて」
「ん、ああ」


素直に口を開ければひやりとしたアイス。
滑らかに溶けるソレは越前の言った通り美味しい。
一口食べさせたら満足したのか、越前はまた食べ始めた。
見れば頬にクリーム。


「おい、ついてんぞ」
「とって」
「仕方ねえな…、ほら」


まったくどうしようもない後輩だ。
指で掬い取り自分の口へと運ぶ。
顔が綻ぶ越前を訝しげに見れば、今度はチョコをつけた唇が開く。


「…先輩、今日何の日か知ってます?」
「…は?何の話だ?」
「バレンタイン」
「…っ!?」


要領を得ないこの後輩の一連の行動がようやく結び付く。


「このパフェ、先輩のおごりっスよね?」
「…てめ、何が言いたい」
「別に?ゴチソウサマデシタ」


ニヤニヤと笑う生意気なチョコ付きの唇を指で抑えて、掬ったチョコを舐めた。


「これでおあいこだろ」
「〜っ」


机に突っ伏した越前の顔は見えなかったが、隙間から覗く真っ赤な耳がすべてを物語っていた。


END
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