テキスト

□交換日記
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「越前、ノートだ」


す、と差し出された新しめのノート。すでに何度か交わされた越前と海堂の交換日記だ。
苦々しい顔でそれを受け取ると、海堂から越前の日記に対してのダメだしが始まる。


「先輩の輩くらい漢字で書け」
「…その漢字知らないっス」
「今度書けなかったらグランド20周だな」
「げっ」


海堂が去ったあと、ブツブツ文句を言いながらノートをめくる。
相変わらず海堂の字は綺麗だ。しかもボールペンなのに間違えた形跡がない。越前のページには、ご丁寧に赤ペンで添削付きだ。


「何これ、輩とか難しいんだけど…」


1日置きにダメだしを言われても、この日記が嫌にならないことが不思議だ。最初は面倒で仕方なかったが、普段交流のあまりない海堂の側面を知るのは悪い気はしない。


家に持ち帰り、何とか「海堂先輩」と書いてみる。
ふと、海堂の下の名前を思い出す。確か難しい漢字だった。このままではどうにも悔しいので、どうせなら難しい漢字を使って驚かせてやりたい。
携帯を辞書替わりにして、先程書いた「海堂」の文字を消して「薫」と書き込んだ。
海堂の驚く顔が楽しみだ。
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