テキスト
□交換日記
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翌日、海堂にノートを渡しその場で見るように促した。
「…何だよ」
「ちゃんと頑張ったんスよ」
「ふん、どうだかな」
字を追っていた海堂の目がぴたりと止まる。そして複雑に歪んだ。
思った様な反応ではない。
「…この、か、薫先輩てのはなんだ…」
「え?それで漢字合ってるんスよね?」
「ま、まあ、合ってる、が…」
しだいに赤くなっていく海堂の顔。
益々意味がわからない越前。
驚く場面ではなかったのだろうか。
「と、とにかく、もう俺の名前は名字で書け」
「何で?せっかく書けるようになったんスよ」
「ダメだ。書くな」
身体を反転させて立ち去ろうとする海堂の袖を思わず掴んだ。
「待ってよ、薫先輩」
その瞬間、海堂の顔が非常に面白い顔になった。茹蛸の様な赤さに、驚いたのか怒っているのかよくわからない表情。
そこではじめて越前はピンときた。
「…薫先輩、わざわざオレのためにこんなことまでしてくれて、アリガトーゴザイマス」
「な、なに言ってんだ!」
ニヤニヤと生意気な笑顔で海堂の腕に纏わりつく。
触れた腕も沸騰しそうなほど熱い。
その様子に目を細めて、目一杯優しくて色っぽい声色で言ってやろうと企んだ。
『オレのこと、好きなんスよね』
悪い気はしないから、腰砕けになった薫先輩を思い切り抱き締めてもいいっスよね
END