テキスト

□同棲≠ルームシェア
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ぐつぐつと鍋の煮える音。
グリルに入った魚も程よく焼けている。
茶碗蒸しも用意した。


「あと10分で帰ってくるんだったら…、間に合うか」


先程きたメールを確認して、風呂も沸かさなくては…と呟いた。


全ては同居人、越前リョーマの要望。
海堂と越前は大学に通い出してから、ルームシェアをしている。


別段構ったわけでもないのに、越前は海堂に懐いている。
越前が高校を卒業した後、同棲しようと誘われた。
日本語がまだ不自由なのかと一人納得して、そのルームシェアを引き受けた。
ルームシェアと言っても、渡米して試合ばかりの越前が帰ってくるのはわずか。
要は一人暮らしの状態に近い。
それでも定期的に帰ってくる越前は、今回の様に事前に連絡をして和食や風呂の用意を頼んでいる。


風呂が沸いた合図の電子音が鳴り、立ち上がると、ガチャガチャと忙しく玄関の鍵を開けようとしている音がした。
少し長い溜め息をついて玄関へ向かう。


「あ、ただいま」
「…おぅ」


言うと同時に越前が抱きついてくる。
そのまま両頬に軽いキス。
何ともアメリカ式の挨拶に最初はそれこそ戸惑ったが、今ではじっと動かずただ過ぎ去るのを待っている。
しかしどうしても譲れないものもあるのだ。


「そ、それは待て!」
「何で?」


唇を尖らせて不満そうな顔。
相変わらずそういうところは可愛いから困る。
しかし、尚も唇に唇を合わせようとする越前を強く押し返す。


「と、とにかく、駄目なものは駄目だ!ここは日本なんだぞっ」
「オレはさっきまでアメリカだったからいいんだよ」


何か言い返そうと視線を彷徨わせた海堂の一瞬の隙をついて、越前は唇を奪った。


「ってめぇ…!」
「ただいま」


にっこりと心底嬉しそうな笑顔をみせられて、怒る気が失せた。


足取り軽くリビングへ向かう越前の背中に、小さくおかえりと呟いた。


END

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