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□季節外れの花火
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越前がアメリカに旅立って2ヶ月あまり。
大阪遠征の際、ふらりと日本へ立ち寄ったが、挨拶する間も無くまた戻っていってしまった。
あいつらしい、と猫のような振る舞いの越前を思い浮かべる。
どこか寂しさを感じる自分を振り切る様に、海堂は休日の自主練習のため走りだした。


しかしそれは、唐突に遮られた。


「先輩、花火」


海堂がロードワークに使う公園に、越前はいた。
あまりに突然の訪問、そして第一声に開いた口が塞がらない。


「お、お前、な、いつ…」


話を遮り、がさり、とコンビニの袋を目の前に突き付けられる。
意味がわからず、とりあえず袋を受け取った。


「花火」
「いや、なんの話だ」


袋、と促され渋々中を覗いてみる。
中には値引きシールが貼られた花火のセット。


「花火したくなって来たんスけど、やっぱり時期外れると安いっスね」
「お前まさか、それだけのために…」


心底呆れた表情の海堂に、少し不貞腐れたように呟いた。


「だって、夏に花火してないし…」


確かにお互いテニスばかりで、花火の様な情緒溢れることはしていなかった。
それに。


「それに先輩と夜会ってすることって、セッ」
「わかった越前、歯食いしばれ」
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