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□季節外れの花火
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その日の夜。
公園で、バチバチと季節外れの音を立てて色とりどりの火花が散る。
そこには少し頬の腫れた越前と海堂が不良よろしく座りこんでいた。


「まったく色気がないっスね、その座り方」
「うるせえ、また頬抓られてえのか」
「あーコワイコワイ」


悪態をつきながら、越前は海堂に寄り添った。危ない、と注意されても離れることはない。海堂も本心では離れることを望んでいなかった。


「またすぐ向こうに行くのか」
「うん」
「向こうの連中は強いか」
「うん」
「勝ったんだろうな」
「うん、もちろん」


花火の音が弱くなり、比例してあたりが暗闇に包まれる。
静寂と闇がこの場を支配しても、触れ合う身体から伝わる体温がひとりではないことを教えてくれる。


「またすぐ帰ってくるっス」
「ああ」
「こっちの人達もまあまあ強いし」
「ああ」
「オレ以外に負けちゃダメっスよ」
「ああ、てめぇにも負けねえ」


暗闇の中でも、その瞳がぎらりと光っているのがわかる。
感傷に浸る暇はない。そんな暇があれば練習に練習を重ね、挑んでくる。
海堂はそういう人間なのだ。


「先輩が先輩で安心したっス」
「そうかよ」
「もっと寂しがってるかと」
「そんなわけねえだろ」
「やっぱ海堂先輩っスね」


弱音を吐露せず、気丈で気高く、諦めない。空回りするときももちろんあるが。越前が海堂に惹かれる理由はその芯の強さにある。
しかし越前は暗闇で見えなかった。一瞬海堂の顔が歪んだことに。



(寂しさなんてそんな感情、言えるわけないだろう)



子供じみた感情をぶつけても、相手を困惑させるしかない。それどころか、呆れて離れていくかもしれない。
越前が思っているよりずっと、海堂にとっての越前の存在は大きい。


「俺は大丈夫だ」


闇に投げ出された言葉は、まるで言い聞かせるかの様な言い草だったが、越前がそれに気付くことはない。
季節外れの花火に、本心が照らされない様に。
今はただこの暗闇にすべてを隠した。


END
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