テキスト

□雨と夢とエスパーと
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雨が日の出を邪魔していたが、それでも朝はやってくる。
渋々身仕度を整え、重い足取りで学校へと向かった。
雨が降った日の朝練は室内での筋トレや素振りが主だったものとなる。部室に入りあたりを見渡すが、越前の姿はない。いつも遅れてくるので当然といえば当然なのだが。
部活に出れば必ずどこかで会うことになるが、なるべく避けたい。元からお互い仲良く話す間柄でもないので問題はない。
ジャージに着替え部室を出ようとすれば、ようやく越前がやってきた。一瞬目を見開いてしまったが、すぐに平静を装った。
いつものように生意気な挨拶をしてきてそのまま通り過ぎる。
何せ夢の話。海堂さえ気にしなければ、越前は何も変わらないのだ。


「あ、海堂先輩。昨日はどーも」


昨日、という単語に海堂は大きく肩を揺らした。読心術、或いはエスパーなのかと酷く困惑する。


「きの、う、て何だ」
「何驚いてるんスか。傘、いれてもらったじゃないスか」


そういえば、と考えを巡らせれば、昨日の帰りに傘を忘れた越前を一緒にいれて帰ったのだった。
今思えば、普段あまり接することのない越前の夢をみたのはこのせいかもしれない。


「…ああ、そういえばそうだな」
「あと、昨晩も」
「昨晩…?」


まさか、と唖然としていると「集合」の声がかかる。
いつの間にか着替えた越前が「遅れるっスよ」と笑っている。落ち着かない心のまま、越前とともに部室を出た。
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