テキスト

□計画的な人生設計
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初期設定のメール着信音が鳴る。
海堂はその相手と内容が薄々わかっていたが、念のために携帯を開き、案の定の相手と内容に溜め息を吐いた。


海堂の人生設計を大きく変えた相手、越前からのメールは
『迎えにきて』
の1行のみであった。


場所も時間も記されていないが、いつものことなので気にしない。
タイミングの良いことに家にいたのですぐに向かうことが出来る。ジャケットを羽織り鍵を持って家を出る。
移動手段は、車だ。


越前にせがまれて18歳になりたてのときに通い始め、免許を取得してまだ半年。初心者マークが眩しい。
貯蓄に回そうと、こつこつバイトで貯めた大金は、このためにあっさりと消えた。
親に頼ったのは、車を選ぶときのみだった。車に詳しくない海堂は、色を青と指定はしたが、特にこだわりもない。越前がシルバーにしろと言っていたが、まるっきり無視した。
そして海堂にはメーカー名などはよくわからないが、青い乗用車に決まったのだ。


カーナビに案内され、着いた場所は空港。
車を停車して『着いた』とメールをする。5分ほど待つと、遠目からでもわかるくらいの存在感を放つ越前が現われた。
すれ違う女性が振り返り、きゃあきゃあと騒ぎ立てては声を掛けようとするが、まるでそれが目に入っていないかのように歩く早さを一切緩めない。そして話し掛けるのをためらうような冷たい表情。
そんな越前に果敢に声を掛けられる女性はいなかった。


ふ、と越前の視線が海堂の車を捉える。
すると嬉しそうに顔を綻ばせこちらに走り寄ってくる。
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