テキスト

□計画的な人生設計
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以前まではまるで猫の様なやつだと思っていたが、嬉しそうに走り寄る様は犬だ。
しかし犬ならもっと他人にも愛想を振りまくだろう、と思い、やはり越前は猫だと改めなおした。


助手席のドアを開けて越前が乗り込んでくる。


「迎えにきてくれて、アリガトウゴザイマス」
「ああ」


迎えにきて当然という様なメール内容だったが、礼儀だけは忘れるなと海堂に叩き込まれたため、決して礼はかかさない。
しかしそれもこの一瞬のみで、越前はすぐに戯れてくる。


「おい、出発するぞ」
「まだアリガトウのキスと、ただいまのキスしてない」
「しなくていい。さっきの女の人達にしてやれ」


サイドブレーキにかけた海堂の手をとり軽く唇を付け、あまつさえ唇同士を付けようとする越前を引き剥がす。


「みてたんスか?」
「嫌でも目に入る。もう少し優しくしてやれ」
「先輩、嫉妬しないんスか?」


海堂はがくりと肩を落とす。何が悲しくて後輩が女性に囲まれて嫉妬しなくてはいけないのか。そこまで卑しい性格をしていないし、そうみえていたとしたら心外だ。


「俺はそんなに卑しくねえ」
「オレに愛されてるっていう自信があるんスね。間違ってないっス」
「……」


前々から不思議で仕方がなかったが、越前とはどこか会話が噛み合わないときがある。
車を買うのも越前が『オレとの将来のため』と力説していたり、迎えにいくのも『オレが免許とったら帰りは運転するから』と熱弁されたり、スキンシップが激しいのも『大切な人にはしたくなるでしょ?』と丸め込まれたり…等々、口が上手い越前に毎回はぐらかされ、なあなあになり、気付いたら言うことをきいてしまっていた。
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