テキスト

□計画的な人生設計
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ひとまず車を発進させるが、越前がずっとこちらをみていて煩わしい。
信号で停まった際に越前と視線を合わせ話したいことでもあるのかと促すが、嬉しそうに目を細めて笑うだけだ。


「薄気味悪いな…」
「えー?ただ、先輩はいつ一人暮らしするのかなって」
「誰のせいで貯金がなくなったと思ってやがる!」
「ふたりの将来のためっスよ。早めに用意しておいたほうが後々楽でしょ?」


また噛み合っていないような気がしたが、確かに免許は早めにとっても損なことはないし、車もあると便利だ。


「先輩、オレと同棲しませんか?」
「ど…?」


同棲、というのを男同士が使うのは些かおかしい気がしたが、越前はまだ日本語に不馴れなのかもしれない。
恐らくルームシェアと言いたいのだろう。


「家を出たいとは思ってたんスけどオレはいつも日本にいるわけじゃないし、先輩が貯金ないっていうなら半分ずつ出して一緒に住んだほうが、お互い得じゃないっスか?」
「まあな…」


いずれは一人暮らしをしたいと思っていたが、越前のせいで貯金はなくなってしまった。確かに魅力的な話だ。


「別に構わない」
「そう。良かった」


ニヤリと笑う越前に何かありそうで身構えたが、すでに手遅れで、軽い音を立てて唇が合わさった。


「お前…!」
「あ、先輩信号変わった」


このスキンシップの行き過ぎた後輩と一緒に暮らしていけるのだろうかと、早くもルームシェアを了承してしまったことを後悔し始めた海堂であった。


END
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