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□真夜中のビジネスタイム
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※リーマンパラレル※


高級だと一目でわかる抜群の眺望のホテルの一室にて、スルリとネクタイを外す。窓からは騒がしいまでの夜景が一望出来る。
後ろを見れば、一瞬肩の揺れた部下。
苦笑して手招きすれば、嫌そうに、戸惑いがちに、おずおずと近寄ってくる。


「し、社長…」
「プライベートは社長じゃなくて呼び捨てで良いって言ったじゃないっスか」
「お、俺相手に敬語、使わないで、くだ、さい」


相手のネクタイを弛めて、ベッドへ押し倒す。
愛しい、年上の、部下。



────────



始まりは、ただの上司と部下だった。たかが1歳差の越前と海堂は、しかしそれでもその関係を突き通していた。堅い海堂は、年下の上司に敬語以外を絶対に使わないからだ。
均衡が崩れたのは、ただの悪戯。からかい半分で越前が呟いた一言だった。


「ねえ、抱かせてよ」


ふたり以外誰も居ない社長室で、手渡した書類に目を通している海堂に唐突に投げ掛けた。
真面目な海堂がどんな反応を示すか、単純にみてみたかった。
真っ赤になって怒るだろうか。上司ということを忘れて暴言を吐くかもしれない。
反応が楽しみで手で隠した口許はニヤけている。



「畏まりまし、た…」



しかし相手は堅物だった。年下と言えど、上司の言葉に逆らうという考えを持ち合わせていない相手だった。


「…え?いや、…あの」
「俺は、構いません」


しかし言葉とは裏腹に、心底嫌そうに顔が歪んでいた。噛み締めた唇が痛々しい。
そこまで嫌なのか、と、どこか傷付いた心を押し込んで、どうするべきか考え込む。


しかし、考えることに早々に飽きがきて、据膳喰わぬは…と都合の良い言葉が頭を過ぎり、冒頭の会話へと戻る。



────────



「ねえ?ネクタイ外したら、もうただのオレより年上の海堂薫っスよね?」
「そんな、…」


俯いた顔を、指先で軽く持ち上げて目を合わせる。不満からか少し尖らせた唇に、触れるだけの口付けを送った。


「ビジネスタイムは、これで終わり。ね。海堂先輩?」


弛ませたネクタイを完全に抜き取って素肌を暴いていく。
オフの顔に変わる海堂は、嫌そうな表情はそのままに、頬が朱に染まっていく。その表情に、嫌悪感はなく。
思わず期待してしまい、耳元で優しく「海堂先輩、好きです」と囁いた。


「…ちくしょう、越前、卑怯だ!」


意志の強い瞳はただ情欲を煽るものでしかなく、越前は知らず喉を鳴らしていた。


ふたりの真夜中のビジネスタイムは、今、終わりを告げる。

END

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