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□ついつい、空回り。
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薫風そよぐ、初夏の風。
目一杯吸い込み、吐き出す。
彼が生まれた、この季節。それだけで風すらも愛しく思える程度に越前は重症だ。


越前が中学3年にあがり、海堂は高校へ行ってしまった。ひとつの歳の差は中々に残酷だ、とはじめて思った。
離れたのは珍しくない。それもそのはずで、越前はアメリカと日本を行き来していたのだ。さすがに部長を任されればそうもいかず、今は日本に滞在している。
それを考えれば、支障のない距離に海堂はいるのだ。


しかし4月からこの5月までの一か月、会っていない。
忙しい、と何かに託つけて海堂に避けられている、少なくとも越前はそう思っていた。
一応、恋人、という甘い関係にあるはずなのに。
海堂ほどではないが、越前も沸点が低い。いい加減フラストレーションが溜まっている。避けられている理由も知りたいが、単純に海堂に会いたい。話して触って、抱き締めたい。
そんな想像をし、ぷつん、とキレた音がした。ような気がする。そして無理矢理にでも会いに行こう、と決意したのであった。


少し離れた場所に位置する青学の高等学校。何も離れた場所に建てる必要などなかったのに、とぶちぶち呟いて、越前は部活のない放課後、待ち伏せをする。海堂も部活はない、と言っていたので確実に鉢合わせするはずだ。
ベタに校門前、ということでジロジロと視線を受けるが、視線には慣れているので気になどならない。キャッキャッとはしゃぐ女子の歓声の意味をわからないほど鈍感ではないが、そんなものにまったく興味がなかった。
女性に興味を持つ前に、海堂に夢中だった。
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