テキスト
□ついつい、空回り。
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「オレのこと、嫌いになった…?」
ぽろり、と口から零れた。
つい言ってしまった。なんて女々しいことをきいてしまっているのだろう、と自己嫌悪すらする。
しかし、きいておかなければ答えは出ない。避けられていた理由がそれならば、どうしようもない。
「はあ!?そんなわけねえだろ!てめぇを嫌うとかそんなこと…あ、」
海堂は真っ赤な顔で慌てて「違う!いや、違わねえ!けど違う!」とよくわからない否定をしていたが、越前には充分すぎた。
嫌われてなどいなかった。それだけで救われる。
「先輩!」
両手を拡げていまだ慌てふためく海堂を抱き締めた。
押し返してくるが、構わずぎゅうぎゅうと腕に力を入れる。観念したのか、海堂は力を抜いて、身体を預けた。
「苦しい、少し腕の力弱めろ」
「やだ」
「……仕方ねえ野郎だな」
越前の肩に顎を乗せ、呆れ半分に笑っている。
顔が見れないことを残念に思うが、腕を離す気もないので良しとした。
そしていよいよ核心に迫る。
「嫌いじゃないなら、なんで避けてたんスか」
「…あー、」
歯切れ悪く、中々喋ろうとしない。あー、だとか、その、だとかゴニョゴニョ呟いては、口を噤む。
そんな態度に、海堂自身も苛立ったのか、「ちくしょう」と言い放ち、ようやく話し出す。
「なんだ、その、お前今忙しいだろ。部長になって」
「まあ、それなりに。でも会えないほどじゃないっス」
「…ああ、そうだな」
去年海堂も部長だったのだから、それくらいは理解している。
言い訳がましく「部長になったから」を理由にするのは海堂にとって得策ではなかった。
つまりそれは本当の理由ではないのだ。
ますます越前の腕が背中を強く掻き抱いて、苦しい。