月下の闇
□髪
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ある朝のことだった。
眠い目を擦りながら、ハオは長い髪を結っていた。
しかし、上手く纏まらない。
「なにしてんだ、ハオ」
「…髪が纏まらなくてね」
「ん? ちょっと貸してみろ」
葉は後ろからハオの髪を掻き揚げて、高くに持ち上げる。
掌から零れる艶やかな髪。
何度も集めては持ち上げるが、逃げてゆく。
「ま、纏まらん…」
「だろ? …最近暑くなってきたから邪魔だな……暇だから、切ってこうようかな」
「き、切るんか!?」
ハオは手で髪を整え、こくりと頷く。
「暑いしね。 ああ、大丈夫だよ。 葉より短くはしないからね」
「そ、そうじゃなくて…」
髪、切っちゃう方に哀しんでるんだけどな・・・。
全部、全部、オイラのなのに。
「……オイラが切ってやる」
「…なんか言ったかい?」
聞こえたのに、聞こえないふり。
だって、葉が・・・葉が・・・・・・。
「オイラが切る!!!」
・・・葉、真っ直ぐ切れるかい?
でこぼこだったり、あまりにも真っ直ぐとかになったら、嫌だよ・・・。