月下の闇
□髪
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「暴れんなよ、ハオー」
「危ない!! なんで真っ直ぐもてないんだい!?」
「持ってるだろ!! いいから前向くんよ!!」
ぐいと首を無理矢理前に向けられて、かなり・・・痛い。
そして、間髪いれずにじゃき、とはさみの音。
「え……もう、切った…のかい?」
「おう、切れたぞ! でもちょっとだけだ」
楽しそうに嬉しそうに言う葉に溜息も忘れる。
だって、段々、段々・・・切られてゆく僕の毛先は真っ直ぐになっていくんだから。
はあ、と肩を落とすと同時にリズミカルなはさみの音が、いきなり大きな音をたてた。
「え…?」
「あ…」
「な、んだい? 今の音…」
「す、すまん…ハオ。 その…」
ハオはゆっくりと自分の右側の髪を鏡に映す。
すると、タダでさえバラバラの長さに切られていた髪の上に、更に短く切られた髪が散らばっていた。
「葉……どうしてくれるんだい?」
「いや、その…」
葉からはさみを取り上げて、自分でちょきちょきと整える。
見事に葉と同じくらいの長さになってしまったハオの髪。
整え終わると、ハオは黒い笑みを浮かべて座り込んでいる葉を見下ろす。
「さて、葉……こんな長さになっちゃった責任、とってもらおうか」
「す、すまん!!」
葉が担がれて、何処に連れて行かれたかは、彼等しか知らない・・・。
髪
(独占欲もほどほどに!)
2008,04,28