いち

□もうどうにでもシて。
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「愚かなり」




神聖な滝の方からそぐわぬ雄の香りがして、どんな阿呆が情事に明け暮れているのかと好奇心から見に行けば滝に打たれながら自身を慰める男が一人。

どうりで女の匂いがしないはずだと、違う種類の阿呆であったか、と去ろうとすればあろうことかその男の口から出たのは己の名だった。

よく見れば暑苦しい真田の小倅ではないか。

そういう事かと口元が弧を描くのを止められず半蔵は悪戯にその男に声を掛けた。


まあ、情欲の対象は十人十色。己がその対象にされたのは何度も見てきたから別段感情は湧かなかった。
彼は実に面白い反応を示す。



だがその後の若者の悲壮な顔といったら、半蔵は少しばかり不快を覚えた。



次会うことが有れば、からかってやろうと思うのだった。




‐終‐


 
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