弐
□ちりめん
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さあさあさらさら。
梅雨に入った大和の国、降り注ぐ雨は静かで優しいが、少し冷たい。
そんな雨音を聞きながら、重たくなった頭を休めようと寝転んだ。
湿気を吸った畳はひやりと冷たく、しかし人の肌に触れれば暖かく。
蛙の声が遠のいてゆく。
何も考えたくない。
「蛙に生まれれば良かったのだ…」
だったらば鳴いて雨に打たれて飛び跳ねて、好きなところへ行けただろう。
人として生まれ、
三好として生まれ、字を覚え感情を覚え憎しみを覚え、飯を喰い人を殺し血を浴び悩み考え笑って泣いて…
「人とは面倒だ…。」
誰に言うでもなく零れた。
かこん
と獅子脅しの軽快な音が規則的に鳴り、欲のまま眠りについた。