いち

□服部半蔵
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どれくらい眠り続けたのだろうか?
今深い沼から意識がゆっくりと戻ってきた感覚を感じれば、自分は眠っていたのだろうと小柄な忍は考えた。

眠ったはずなのに体は回復できていないようで、上手く脳の指令を受け付けない。


鉄観音の様に重たい瞼を押し上げると陽の光が射し込んできて、今が日中だと分かる。


自分はいったい…


明るく清潔感のある室内に、きっとどこかの屋敷であろう事は明白だったが記憶が曖昧で役に立たない。


とりあえず起き上がろうと腹に力を込めてみたところで、ようやく自分の傷に気が付いた。


腹が灼けるように熱い。

表面にとどまらない、この心拍に呼応するような痛みは恐らく筋までは確実に達しているであろう
と冷静な部分で考える。
内臓は…どうであろうか。

「はぁっ…」


無意識に溜め息が漏れると近くで大柄な男の気配がこちらへ向いた。


不覚にも今まで気付かなかった。


「起きたか、あまり動くなまだ血は止まらぬ。」

じんわりと液体が腹の布を濡らす感覚がした。


 
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