いち
□絶対的忠誠
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ざあざあと冷たい雨が降りしきる。
小柄な忍びに容赦なく打ち付けるそれは忍びが浴びた血しぶきを洗い流していく。
忍びはそんな雨に打たれながらただただ立ち尽くしていた。
脳髄が心臓の鼓動に呼応して脈打ち激しい痛みが襲う。
耳には自分が絶ったそれの最後の言葉が木霊して離れず、
心臓はきゅうきゅうと縮み破裂してしまうのではないかと思うほどで。
こんな訳の分からない、外傷を伴わない痛みを感じたのは初めてで忍びは困惑していた。
精一杯の力を振り絞りやっとの思いで意識を繋いでいる。
ざあざあと降り付ける雨はまるでその忍びの心境を物語るかのように、弱まることなく降り続いた。
すっかり冷えてしまった体、だがそこから動けない。
殺すのを躊躇ったことも、
殺したのを後悔したこともなかった。
忍びとして生まれ落ちた自分はただ殺すのが当たり前の筈だった。
いつからこんな感情を持つようになったのか、
自分自身の感情に戸惑いを隠せない。
自分が殺めたそれの血の味が口内を満たし、馴れたはずのその味が酷く不快に思った。
うまく息を接ぐことができなくて鼓動が速くなる。
冷たい雨とは少し温度の違う液体が頬を伝った。
雨は止む気配が無かった。