いち
□触れてはいけない。
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奇襲をかけ襲いかかったはずだった。
にやりと笑った相手の頭が気になったが、杞憂を振り払い槍を振るう。
辺りには仲間の屍が数多、
はめられた。
次々と音もなく倒れ逝くは仲間のみ、相手は忍衆だったのだ。
それでも、奇襲は防げたはず。と思えば犠牲になった者達も救われる。
そう思っていたが、それは伝令の一言で無に帰した。
「幸村さま、本陣が奇襲を受けました。」
「何…と?」
状況が呑み込めず唖然とする。
「親方様は…!」
「奇襲は受けましたが、なんとか逃げることが出来たようです。
我々にも早々に撤退するようにとの命が。」
総大将が無事とあって安堵するが、別の所で怒りの焔が首をもたげ始めた。
「然らば…散っていったもの達の命は…」
分かっている、これは戦なのだ。
どんな手を使われても、理不尽な事などないはずだ。
結果が全て。
負けたのはこちらに奢りがあり備えがなかった、ただそれだけのこと。
それでも怒りが治まらなくて、忍び衆の頭とおぼしき者に切りかかる。
「幸村さまっ!なりませぬ!!!」
直近の者が叫んだが、止まる気は無かった。