壱
□月、飲み込まれて。
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梟を生け捕り、どうしたものかと思案する。
ひと思いに殺してしまえば良かった。
主を奪還せんとする松永軍の配下たちは意外にも手強く、久秀の配下らしくなかなか姑息だった。
「小十朗様、奴を如何するおつもりですか?」
自軍の兵たちもなかなか手こずっている様で。
「このままでは埒が飽きませぬ。」
疲弊は明らかだった。
「分かっている。俺も決めあぐねているところだ、」
頭が痛い。
この状況へ持ち込んでしまったのは正直まずかったと、後悔先に立たずと言うがまさにそのとおりで。
梟をみすみす明け渡せばまた狙われるのは火を見るより明らかだ。
かと言って梟を殺してしまえば、狂った配下に何をされるか分からない。
「ちっ」
堂々巡りを始めた思考に目眩がする。
「ちと頭を冷やしてくる」
外に出ると、きんと冷えた空気、澄んだ空に月がぽっかり浮かんでいる。
あぁ、あの晩もこんな月だった。
吐く息は白く、冷たさが鼻を擽る。
小十朗が悩むとき、月はいつも空から見守っていた。
一呼吸おいて小十朗は脇差しを手に地下へ向かった。