復活U
□大切なのは、
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「ぅー…届かない」
キッチンに立った私は高い所に備え付けられている棚から調理器具を取ろうと椅子の力を借りて手を伸ばした。だけど一向に届く気がしない。あとちょっとなのに…!
「んぬぬぬーっ」
変な声をあげながらも何とかしようと不安定な椅子の上でつま先立ちをして一生懸命に手を伸ばす。すると、器具がカチャリと音を立てた。
「届い、った!」
「何やってんだ?」
「きゃっ!?」
「っおい!!!!」
器具を取ることに一生懸命になりすぎたのか、彼が気配を消していたせいなのかはわからないが、その存在に気付いていなかった私は驚いてバランスを崩してしまった。
ギュッと目を閉じる。
そろそろ来るであろう衝撃に備えて身を縮めるが…なかなかやって来ない。それどころか何かに支えられているような気がして恐る恐る目を開ける。
「はっ隼人…」
「…っぶねぇ」
眉間に皺を寄せて安堵の溜め息をはく隼人は、私が床とこんにちはをしてしまう前に抱き寄せてくれたようだった。
「あ、ありがと」
「ったく危ねぇんだよ」
取れないなら俺を呼べよな、なんて呆れながら言ってくる隼人に私は頬を膨らませた。
「そんなことで仕事の邪魔したくなかったのよ」
私がそう言うと、隼人は頬を掻いてから私の頭に手を乗せた。
「ばーか、変に気ィ使ってんじゃねぇよ」
「馬鹿とは何よ!」
「うるせー」
隼人は照れたように私の髪をくしゃくしゃにした。ここキッチンなのに…!
「いいか!俺の一番は「綱吉」………ちげぇよ」
「え、違うの!?」
「確かに10代目には忠誠を誓ってる。一番って言われてもおかしくはねぇが…10代目に対する想いとお前に対する想いは別もんなんだよ」
隼人を見つめると、その目がいつになく真剣で引き込まれる感じがした。
「俺はお前を愛してるし、誰よりも大切に思ってる」
「なっ……」
普段の隼人からは想像も出来ないような言葉が数々出てきて私は顔が赤くなるのがわかった。
それを見た隼人も自分が何を言っているのか理解したのか、ボンッと沸騰したみたいに一気に顔が赤くなった。
「とっとにかく!!俺を頼れってことだっ…!!!!」
「う…うん」
「気をつけろよっ!!」
「えっあ、隼人!?…………行っちゃった」
慌ただしく出ていってしまった隼人の後ろ姿を目で追いながら、ふぅ…と肩の力を抜く。
頬に手を当てるとまだ熱を持っていた。しかしその頬は嬉しさを隠せずに緩むばかり。
「恥ずかしいなぁ、もう…」
その嬉しそうな呟きは広いキッチン小さく響いていた。
Fin.
(私も同じ気持ち)
(ぐあぁぁあ!!俺は何を言ってんだよ…!!!)
(獄寺煩いのなー)