復活U

□愛不足なんですが。
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「おはよう!隼人先輩!」

「『おはよう』じゃなくて『おはようございます』だろ、バカ」


朝。
これから沢田先輩の家に行くであろう隼人先輩の後ろ姿を見つけて駆け寄って行くと、おでこを小突かれた。
そして、言い直せと言わんばかりに睨んでくる。
そんな先輩の目は周りから見れば凄く恐ろしいんだろうけど、私としては恐ろしくも何ともない。
むしろ、それが不器用な先輩の愛情表現だと思ってます。…勝手に。


「いいじゃないですかそれくらい。先輩ってば心が小さいですねー」

「うっせ」

「これから沢田先輩の家に?」

「お前には関係ねぇ、ついてくんな」


隼人先輩はスタスタとペースを早めて先を行ってしまう。


「わー酷い。これでも彼女ですよ?」


そう返しながら先輩の後に続く。
…実際、先輩のペースは私にはとても早く、ついていくだけで精一杯だ。


「隼人先輩聞いてまぶっ!?」


先輩はいつの間にか立ち止まっていて、それに気付かなかった私は、彼の背中に顔面衝突した。


「〜〜〜っ!…いったぁ……」

「ちゃんと前見てろよな」


そう言いながらも先輩は呆れ顔で私の頭にポンッと手を置く。
それから呆気にとられた私を置いて、再び歩き出した。


「っ酷い!先輩酷いですよ!」

「うるせぇよ!近所迷惑だ!」


復活した私は先輩の背中に向かって叫ぶ。
距離はそんなに離れていないから確かに私の叫び声はうるさいんだろう。
けど先輩も負けてないよ、うん。


「先輩の愛が足りないよ…うわーん」


感情のこもっていない声音で言ってみると、隼人先輩はまた立ち止まって溜め息をついた。
幸せが逃げちゃうよ。


「お前な……これ以上愛されてどうすんだよ」

「え?」

「…っ何でもねぇ!行くぞ!」


隼人先輩は沸騰しちゃうんじゃないかってくらい顔を真っ赤にしてた。
じっと見てたら多分殴られるだろうから見ないようにしてるけど…引かれた手が熱いよ、先輩。


(不器用なひと)
(でもそんな先輩が大好き)


そう思いながら先輩の手をさりげなく握り返して笑みを浮かべた。





Fin.

(おはよー沢田先輩!)
(おはようございます十代目!)
(おはよ、2人とも…ってあれ?獄寺くんどうかしたの?)
(い、いえ!)
(先輩はぶきっ(うるせぇ!)むぅー)
((仲良いなぁ…))

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