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□この手を離さない。
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沈黙のまま、数十分が経過した。

湯川がキーボードを叩く音だけが、やけに大きく響いていた。


薫は何度も湯川の様子を伺っているが、依然として厳しい顔でいる湯川に未だ話を切り出せないでいた。

刻々と、約束の時間が迫っていた。


最期にもう一度湯川の様子を伺う。
やはり、キーボードを叩く湯川の表情は厳しいものだった。さらにピリピリとした空気を回りに張り巡らせており、あまりの恐ろしさに薫は尻込みした。

今日のところは諦めて、また明日来よう。薫はそう決めると、荷物を纏めて席を立った。

「どこに行く。」

腹の底から響く様な声が、空間に響いた。
薫が振り返ると、湯川が席を立ってこちらへと向かって来るところだった。

「ど、どこへって…帰るんです!」

「元カレだろう。相性が合わずに別れたなら、何を今更会う必要がある。」

「別に、相性が合わなかった訳じゃありません!」

「でも別れたんだろう。」

湯川は薫の正面に立つと、彼女を無表情に見下ろした。薫はうつ向くと、精一杯の声で反論する。



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