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□aurora aura
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先生を好きになって
私の世界は、劇的に色付いた。
先生の顔を見るだけで世界が華やぐだなんて。
そんな乙女ちっくなの…ガラじゃない筈なのに。
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「ううう…最悪…。」
長い一日を終え――…。
署を後にした薫は、帰宅前に帝都大学を訪れていた。
捜査報告という大義名分を振りかざし、決して湯川に会いたくて来たわけではないと自分に言い聞かせてここまで来たのは良かったが…。
予期せぬにわか雨に降られた薫は、駐車場から校舎に入る過程で全身がずぶ濡れになっていた。
身体に、濡れた衣服がへばりつく。
「気持ち悪…。駐車場を出た時は余裕だと思ってたのに〜!」
車を出て歩き出した途端に強まった雨足。薫は運悪く、それに襲われてしまった。
手持ちのハンドタオルで手早く滴を拭き取ってから、大学校内へと足を踏み入れる。
全講義が終了した後で、しかもこの雨だ。校内は驚くほど静まりかえっていた。
水を多量に含んだ髪を気休め程度に撫で付けて、目的の第十三研究室の前に立つ。
軽くノックをすると、中から「どうぞ」と声がした。
「酷いな」
扉を開けてすぐ、挨拶よりも早く掛けられた声。
研究室の主は不躾に薫の頭から足先までを眺めると、僅かに目を丸くした。
「いきなり大雨になって…」
「ほら、これを。」
空調の効いた室内にぶるりと身体を震わせた薫に、湯川は戸棚からバスタオルを投げた。
「すみません…、」
「毛布を持って来る。服は一旦脱いでしまえ。そのままでは風邪をひく。」
空調の温度を調節しながら湯川が言う。
男と二人きりの部屋で脱ぐのはどうかと思われたが、芯から冷え始めた身体には抗えず…。薫は、渋々物陰で重くなった服を脱ぐ事にした。
濡れた下着は着たままにして、受け取った毛布をすっぽりと被る。
濡れた衣服は、湯川が早々に持って行ってしまった。
スーツをタオルで挟み、丁寧に水気をる湯川に「自分でやります」と慌てて駆け寄る。
「下着姿でか?」
「あ…。」
胸元でガッチリと毛布を抑えている自分の両手を見下ろして、薫は間抜けな声をあげた。
「もう終わる。後は暫く干して、帰り際にアイロンを当てれば問題無いだろう。」
「…すみません。ありがとうございます…。」
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