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□それ以上は、言わない〜草薙〜
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「おッ・・・、オクラホマですか?!内海を?!」

「ああ・・・まあ、理由はどうあれ良かったんじゃないか?今や"ミステリーハンター"と呼ばれるまでに成長した訳だし。先輩冥利に尽きるだろ!」

「ー・・ああ、ええ、まあ。」
上司が酒の席で声高々にそういうのを、草薙は曖昧な笑顔でもって聞いていた。
かつてミステリーハンターの異名を冠していたのは紛れもなく自分であった筈だが、時が経つのは本当に早いものだと思う。
それと同時に、"あいつはどうするんだ"という焦りが浮かぶ。
"そうか、めでたいじゃないか。"なんて言った暁にはどうしてやろうか。



*****


「そうか。」
「そうか。ってなお前ぇ・・・」

予想はしていても、こうも予想通りの反応だと二の句に困る。

「めでたいことじゃないか。」と、そんな二言目の予想まで律儀に当てずとも良いのに!草薙は額を指で押さえると、かつての学友の性(さが)を呪った。

「あのなぁ!ちったァ焦れよ!いいのか、それで!」
「邪魔をしに来たなら帰れ。」
いつもの研究室で、あの薄いコーヒーを淹れながら湯川は見向きもせずにそう言う。

草薙が気になるのは、湯川と内海。この両者の関係に他ならない。

「知らねぇぞ取られても・・・!」
数少ないお節介な友人の心配を他所に、湯川は分厚い本を数冊手に取り席についた。



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