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□あえない夜に
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貝塚北署の資料室。
膨大な資料が並ぶ棚と簡素な事務机しかないそこで、内海薫は捜査資料片手に悩んでいた。
とはいえ、その内容は事件に何ら関係ないのだが…。
「はぁ…」
薫は大きなため息をついた。
部屋の入り口脇にあった机に資料を置くと、席につく。
彼女の悩みとは、2ヶ月前から付き合い出した恋人"湯川学"との交際についてである。
付き合い出して浮かれたのも束の間…。
途端に、会う機会が見事になくなってしまったのだ。
"付き合うまでは、嫌でも事件の捜査協力を依頼する機会があったのに―。"
今では、研究室に顔を出す事すらままならない。
唯一二人を繋いでいるのは、電話だけ…。
いつもは強がっていても、そこは女の子。好きな人と会えないというのは些か堪えるものだった。