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□Sweet honey
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バレンタイン――
それは製菓会社の戦略…
乙女の決戦日―。
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「う…。何これ…。」
異変は、研究室の扉を開けた途端に分かった。
部屋一杯に充満する、甘ったるい芳香…。
ヤケに人が多い研究室――。
いつも簡素な雰囲気を醸し出している研究室に慣れてしまっている薫は、つい後退った。
「あ。内海さん!ちょうど良かった!」
そこへ、ゼミ生である渡辺が声をかけた。
「今日はチョコパーティですよ!先生が貰ったそうで――。」
薫の腕を引いた彼女は、そう言うとテーブルを指差した。
「うわ…。スゴい…!」
促されて薫が見た先には――
テーブルに所狭しと並べられたチョコ、チョコ、チョコ、チョコ…
「こ…これを先生が…?」
「はい。それも全部差出人不明だとか。ですけど、既製品ばかりなので害は無いそうです。」
「差出人不明で…コレ…?」
たたみ1畳分はあろうかというテーブルがチョコで埋まっている光景を見た薫は、信じられないといった風に渡辺を見た。
「直に渡しに来た女性の分は断ったそうです。貰ってしまうと、何かと後が大変だそうで。フフフ。」