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□眠れる姫と聡明な狼
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第十三研究室にて

准教授はまたしても悩んでいた。

合鍵を渡してから暫くは、「彼女が来ない」と悩んでいた彼。

だがそれは、薫が湯川に理由を打ち明ける事で解決した。

では何故、彼は今また悩んでいるのか…。

彼の目下の悩みとは、進展が無い。という事であった。

あの日、薫が初めて合鍵を使った日に、彼女は初めて湯川の家に泊まった。しかし、湯川が入浴後リビングに戻ってみると、彼女はソファで寝息をたてていたのだ。

優しい湯川は、起こしてまで想いを成し遂げようとはしなかった。

以後、薫が泊まる素振りを見せる事はなく今に至っていた。

つまり、良い歳の大人が驚く程に健全な付き合いをしている訳である。

キス一つにおいても、それは同じで…。

触れるだけのキスで硬直してしまう彼女相手では、満足に出来ずにいた。

一つ悩みが解決すると、また一つ悩みが増える。

また今度も、「彼女相手だと何故こうも上手くいかないのか…。」と頭を悩ませる湯川だった。



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