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□光の先の貴方
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手を繋ぎたい。
キスをしたい。
抱きしめられたい。
恋人になって数ヵ月が経つのに。
指先すら触れ合わないなんて。
私の胸の奥はもう穴ボコだらけよ。
待っているだけなんて、卑怯な事は最初から分かっている。だけど出来ないのは、それもきっと先生が好きだから――。
繋ぎたくても大抵塞がっている貴方の手も。
キスをさりげなくするには高い貴方の身長も。
責めるには愛しすぎて、ねだるには恥ずかしすぎて、結局言葉にはできない……。
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「先生!あの!あの…!」
「捜査なら断る。」
「―もうっ!違います!!」
晩秋の夜道を二人で歩く。澄んだ空気が月光を際立たせ、アスファルトを照らしていた。
ホウホウと、白い息が唇から溢れる。
「だから…あの…、」
湯川の手はポケットの中。
今なら手が空いているのに。周りには誰もいないのに。
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