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□僕の世界
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世界の色は、いつだって一緒だった。
どこまでも澱んでいて、くすんでいる。
―…僕はそんな色彩の中にある原石を見出すのが好きだから
知らず知らずの内に、一人遊びばかりが上手くなった。
「いつまで、くよくよしてるんですか。」
窓から光が射し込んで。
目が眩む。
「慰めなんて要らないから、そっとしておいてはくれないか。」
「安心して下さい。慰めたりなんて、しませんから。」
――煩くて、面倒な人間。
僕の世界に、ペンキで色を塗りたくる。
一人でいる事が最上の幸せだと知る僕に
君は今更何をしようと言うんだ。
「私、」
「なんだ。」
「先生を抱きしめたいです。」
――世界が割れる。
「遠慮する。」
「じゃあ……。キス、しませんか。」
赤い顔で、黒目がちな目を伏せて、
桃色の唇で誘うから
僕の世界は溢れてしまう。
知らずの内に白い手を取って、
自分から引き寄せてしまった。
*
完
*