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□冬虫花草
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12月中旬。
日中の第十三研究室。窓から注ぐ光に包まれた、小さな背中を、彼は見ていた。
「なぜ、此処で寝るんだ。」
家に帰って布団で寝る方が、ずっと疲れも取れるだろうに…。
授業が終わって研究室に戻って来ると、いつも捜査協力を求めてくる女刑事が僕の机に突っ伏して寝ていた。
起きている時には絶対に見せる事が無い、穏やかな表情で。
しかも、隣に掛けてあった僕のスーツを着ている。
暖を取るために袖を通したに違いないが…。彼は考えながら視線を走らせる。
"こんなに華奢だったか…?"
寝ている彼女からは、普段のパワフルさが微塵も感じられない。
見ればスーツの肩幅はもとより、袖口もかなり余っていて、すっぽりと彼女の身体を覆っている。
まるで父親の背広を着込んだ子供の様だ…。