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□冬虫花草
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「ん…、ゆ…かぁ、せんせ…」
そう呼ばれて視線を顔に移す。
夢でも見ているのか、彼女は目を閉じたまま、すりすりとスーツに頬擦りをするよう身じろぎをして、また健やかな寝息をたて始めた。
フニャリと、彼女の口元に笑みが浮かべられる。
――瞬間。
鳩尾が擽られる様な、不思議な感覚が身体を駆け抜けた。
…刑事とは思えないほど無防備な彼女…。
"どうしてくれようか…。"
きっと今回も捜査協力を求めて来たのだろう。なのに、待っている間に寝てしまった彼女。
からかう為の素材はいくらでもある。
「フム、実に面白い。」
時間はたっぷりとある。存分に楽しませて貰おうじゃないか。
「うぅ…。せんせ…?」
「おはよう、内海君。」
→後記