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□あえない夜に
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"先生、連絡くれるけど…。捜査が長引いてるせいで食事すら行けないし。"
現に彼女は、ここ2ヶ月で湯川の誘いを数えきれない程断っていた。
「はぁー…。」
盛大な溜め息が、資料室に響いた。
資料に集中しなくては…とは思うものの、ページを捲る手は一向に進まない。
「あらあら。恋の悩みー?」
資料を片手に不貞腐れていると、開け放していた入り口の扉から、鑑識の城ノ内が現れた。
「あれ…城ノ内さん、どうしてここに?」
城ノ内は私服だった。片手に白いビニール袋を持っている。
「んー?アナタに差し入れ。コンビニのケーキだけどなかなか美味しいわよ。あとは、コーヒー。」
城ノ内は、袋から中身を出すと薫の前に並べた。
「うわぁ。ありがとうございます!」
言うや否や、薫はケーキに手を延ばした。