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□熱ノ浮力(ネツノフリョク)
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「――と、いうことなんです。自宅までお送りしたいんですが、住所ご存知じゃないですか?湯川先生は寝ちゃったので起こせなくて…」

簡単に用件を説明すると、電話の向こう側で草薙がクククと笑う声が聞こえた。
薫は眉間に皺を寄せる。
「草薙さん…?」
「ああ。すまない…住所だったな、説明するよ。」
薫は笑いを堪えた草薙の声が気になったが、住所の説明が始まったために、訊く事は出来なかった――。


*******

湯川は、重い瞼を少しだけ開けた。焦点が定まらない。
彼は今、とにかく眠かった。
身体が自分の物ではないかのように熱く、重い。

何かに支えられて足を動かしているが、歩いている感覚は無かった。

暫くすると、身体が横たえられて楽になる。そこで、彼はもう一度意識を手放した…。


 
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